山行日 2013年2月3日(日)
参加者 CL O含めて12名
 2月3日は、紀峰山の会雪山登山学校の実技で雪上訓練でした。同日朝6時に和歌山を出発して、滋賀県北部の箱舘山スキー場に8時半過ぎに到着。駐車場で慌ただしく身支度を調え、多くの共同装備を分担してゴンドラに乗り、ゲレンデに集合したのが9時半でした。早速、この日、用意できただけの輪かんじきやスノーシューを装着してもらい、ゲレンデの周囲を巡る「歩くスキーコース」に踏み出します。



講師と受講生合わせて12人がゲレンデに勢揃い。まったく初めての人も多くて、全員に輪かんじき(略して輪かん)を履いてもらうだけで20分ほどかかりました。


ラッセル・・・というほど潜らない雪でしたが、とにかく「輪かん」体験。自分で自分の足を踏まないよう、いわゆる「花魁(おいらん)歩き」を心がけます。



絶好の斜面があったので、やっと「輪かんラッセル」の訓練らしくなりました。写真ではわかりにくいですが、40度近い結構な急斜面をキックステップで登っています。



 続いて、雪崩の危険性を事前に察知するための弱層テスト。
 写真はハンドテストで、掘り出した雪の円柱を上から順々に抱き寄せて、弱層(人物のお腹の前に見える断層)から雪がスッパリとずれた瞬間。手首だけで、肘で、肩全体で…と、力の加減を変えて試みますが、このケースは肩から体重を掛けてやっと崩れました。この状態の雪なら雪崩の恐れは低いと判断できます。これ以外に、雪の角柱の頂点にスコップの皿を置いて手で叩くコンプレッションテスト、両手で雪をかき分けて手前に引く簡易テストなどを、実際にやってもらいました。




 寒いので押しくらまんじゅう・・・ではなくて、テントを張るために雪を踏み固めているところです。あらかた踏み固めたら、実際にテントを置いてみて必要な広さと防風壁を作るラインを見定め、テントを張る予定の場所からスコップとスノーソーで雪のブロックを掘り出して周囲に積んでゆきます。
   
 かなりでき上がってきました。中の雪を2ブロック分掘り下げ、周囲にそのブロックを積み上げて、テントが完全に隠れるようにします。これで、冬山につきものの強風を相当程度防ぐことができます。冬山特有の労力が必要な作業ですが、この日はなんたって人数が多いので、みるみるブロック塀が積み上がりました



 完成です。 居住性抜群! 厳しい寒気が支配し強風が吹き荒れる夜の冬山でも、風を遮って静かで暖かいテントの中は天国です。出口は30cmほど掘り下げて、靴を履いたままでの出入りをしやすくしています。テントができたところでお昼にしました。



 昼からは、あまり経験したくはありませんが、雪崩に遭遇して仲間が埋没したケースを想定しての探索訓練。
 写真はアバランチ・ビーコン(緑色の箱)を使って、仲間が埋まった場所を探しているところです。遭難者が身につけていたビーコンが発する電波信号を、残りのメンバーが受信状態に切り替えたビーコンで感知し、受け取る電波の強さから埋まっている方向を絞り、50mレンジから始めて、30mレンジ、10mレンジと徐々に範囲を狭めて遭難者に接近、2mレンジが使える範囲に入ったら腰を落とし(写真の状態)、雪面にビーコンを近づけて半径2m以内に埋没場所を特定します。




 半径2m程度まで的が絞れたら、ビーコンは置いて直ちにゾンデ探索開始。ゾンデとは写真の受講生が持っている接続式の金属棒でプルーフとも言います。探索メンバーは絞り込んだ探索範囲を前にして横に並び、定められたルールで速やかに雪にゾンデを突き刺して遭難者を探します。
 雪崩に埋められた場合、15分以内に掘り出せば生還率は90%を超えますが、それを超えると窒息のリスクが飛躍して生存率は激減、25分で半数が死亡、35分後には75%が死亡するとのことです。とにかく一刻を争って掘り出さねばなりません。




ゾンデで雪ではない感触があったら、感度のあったゾンデをそこに立てたまま、その周囲をスコップで掘ります。



 スコップで勢いよく掘り進んで、ゾンデの先端から30センチ(ここにあらかじめマークをつけておきます)の目印が雪から出てきたら、直ちにスコップを捨てて、遭難者を傷つけないよう手で雪をかきだします。何か見えてきましたね。



 ついに救出! あ、ビーコンを入れた黄色いザックが遭難者です。「お~い、大丈夫かあ!」「しっかりしろよ!」と遭難者を覚醒させ激励する大きな声。ん~、なかなか迫真の訓練でした。(^_^)v

 今回は、メンバーを変えて4回、探索訓練を行いましたが、探索チームに見えないように隠して埋めたザックを、いずれも5~7分程度で正確に掘り起こしました。実際の雪崩のデブリはもっと手強いですが、メンバー全員がビーコン、ゾンデ、スコップからなる雪崩対策「三種の神器」を持参しており、しかも十分訓練を積んでいれば、埋没地点の特定自体は数分で可能なのです。雪崩の可能性が少しでもあるところに入山するときは、くれぐれも備えを十分にして、助けられる命をあたら失うようなことだけはないようにしたいものです。



 次は、雪崩と並ぶ雪山の危険、滑落に備えた確保の訓練です。ちょうど良い写真がなかったのですが、雪の中にデッドマンを埋めているところ。さらにスノーバーを埋め込んで、この二つから流動分散でアンカー(セルフビレイ=自己確保)を取りました。(個々の言葉の説明はリンク先参照)

(リンク)
デッドマン http://www.big.or.jp/~arimochi/climbing.tec.SNOW.jyoukyuu.dedoman.jpg
スノーバー http://www.big.or.jp/~arimochi/climbing.tec.SNOW.jyoukyuu.snow.jpg
流動分散http://www.k5.dion.ne.jp/~tanitani/ryuudou.htm

 次にピッケルを雪の中に打ち込んでそのヘッドを片足でしっかり踏んで立ち、ピッケルの首の部分に繋いだ短めのスリングにカラビナをセット。これにメインザイルを通して肩がらみで確保します。これが「スタンディング・アックス・ビレイ」と呼ばれる、雪原での最もオーソドックスな確保スタイルです。(残念ながら写真がない、誰か撮ってないかなあ…)
 で、確保体制ができたところで、その効果を確かめるため、受講生には確保する人と斜面を滑落する人を交代でやってもらうのです・・・が、雪がグザグザで仰向けになろうが前転しようが斜面に飛び込もうが、どうしても落ちていかない。けど、そんなのは織り込み済みなのであって、ここで「そり」の登場です。このそりに滑落者を乗っけて斜面に送り出し、猛スピードが出たあたりでザイルが伸びきって確保者に来る衝撃を体験。勢いよく出て行くザイルに対し、肩がらみとグリップの摩擦で徐々に制動をかける操作でこの衝撃が和らぎ、女性の力でも十分止められることを体感で理解してもらいます。



 ザイルが一杯になって張りきると、滑落役の人は勢いよく吹っ飛んでそりから落ちますが、皆さん、雪まみれになって落ちてくださいました。実は、こうして雪に慣れることも訓練の目的のひとつなのでしたが、それは十分達成されたと思います。

 さて、このほか、定番のピッケル制動の訓練などをやって15時過ぎに雪上訓練は終了。無事、和歌山に帰り着きました。 さあ、次は本番ですね。(^_^)v

雪山登山学校 箱舘山雪上訓練

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